環境表面のウイルス除染ガイダンス

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環境表面のウイルス除染ガイダンス

日本リスク学会では、「環境表面のウイルス除染ガイダンス」を公開いたしました。資料の改訂内容にについては、本文最下段の「■改訂ポイント」をご参照ください。

2020年04月05日 初版
2020年04月07日 2版
2020年04月09日 3版

2020年04月14日 4版

 

※2020年04月14日4版(2UP)

(1UP形式資料は、こちらからダウンロードできます。)

 

 新型コロナウイルスによる感染症リスクに対して、社会が長期戦で対応していかなければならない状況が見えてきました。新型コロナウイルス感染症の飛沫感染、およびその回避策としてのマスクが取り上げられていますが、最も主要な感染対策は手洗いと考えられています。

 

 この根拠として、
・患者との直接的接触による感染ルート
・患者の飛沫等が付着した環境表面を手指で触った後の間接的接触感染ルート
等の各種接触感染ルートが認識されています。

 

 実は、環境表面に残ったウイルスは、室温では数日間は失活しません。またウイルスの感染力保持時間は、金属、ガラス、プラスチック、木など素材によって異なってきます。そこで、私たちは職場、家庭、公共空間などで、環境表面から繰り返し手指に付着し、間接的接触感染が繰り返されるリスクを考えました。おそらく、今後の日本社会を考えると、中長期的な感染制御として、家庭、職場、公共空間での環境表面除染の知見の見える化が重要となります。

 

 そこで今回は、間接的接触感染ルートに対するリスク管理措置を考えるための科学的知見をガイダンスとして取り纏めました。武漢の市街地をスプレーで除染する風景が、繰り返しニュースで流れていましたが、あのノウハウを、家庭、職場、ビル清掃、公共空間に汎用化できるガイド、という位置づけです。この様な知見の発信は、科学的知見と規制の枠組みの双方から公知化することが可能と考えられますが、その状況は国毎に異なっています。一例として、米国政府(US-EPA)の新型コロナウイルス対策製品の規制上の取り扱いについて、ガイダンスの中で紹介しました。米国EPAは今年の3月初めに、いち早く環境表面のウイルス除染をFIFRA規制の枠組みで扱い、新型コロナウイルス対応製品リストを公表しました。リスク管理のアプローチには多様な選択肢がありますが、米国EPAのリスク管理の規制枠組みは、新興のウイルスパンデミックに事前に備えておく規制制度として先駆的なものと言えるでしょう。危機的な状況に対して、社会に必要なウイルス制御というリスク低減情報を扱えるよう、各国先進国のリスク管理制度や法規の再検証も始まっているのです。

 

 

Fig. 環境表面に付着しているSARS-CoV-2がどのようにヒトに伝播するか、考えてみましょう。まず、COVID-19の感染者がウイルスで汚染した手指でドアノブなどの高頻度接触面に触れ、その部分にウイルスを付着させます。その後別の人が触れることで、手指にウイルスが移動し、そのまま眼や鼻の粘膜に触れることによって感染する可能性があります。したがって、「コロナウイルスが環境表面で感染力を維持できる期間」を知ることは重要です。


 今日に至るまで、3週間ほど学会内の化学物質系有識者との意見調整を取りまとめ、本ガイダンスの形で公開いたしました。新たな科学的知見の更新にあわせて、本ガイダンスの内容は随時刷新していくことになります。どうぞ宜しくお願い致します。

 

■改訂ポイント

2020年04月14日4版

  1. 新型コロナウイルスそのものの環境表面保持時間の最新論文を引用(table 1b, suppl 4)
  2. 殺菌剤について種々の用途例を追加(table 2)
  3. 用語集を追加
  4. FIFRAの有効成分リストを追加
  5. 表中ウイルス株情報は削除・簡便化し、supplementに移動
  6. 英文タイトルを追加


日本リスク学会 理事会コロナウイルス対策検討チーム

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