火. 7月 23rd, 2024

    レギュラトリーサイエンスタスクグループ活動報告

    国立研究開発法人農研機構・農業環境変動研究センター 永井孝志
    花王株式会社研究開発部門 安全性科学研究所 藤井健吉

    【概要】
    レギュラトリーサイエンスタスクグループ(以下 RSTG)は、主に年次大会での企画セッションの開催を軸に約 3 年間の活動を行った。RSTG では、定義論よりも事例研究を重視する方向性を打ち出した。事例研究だけでレギュラトリーサイエンスの全体像を理解できるわけではないが、多くの事例を追うことによりリスク評価・管理に取り組む疑似体験をし、それを積み上げることでリスクや安全、意思決定などの「相場観」を養うことができると考えた。分野としては、メンバーの専門分野である化学物質のリスクを中心としながらも、その周辺分野にも若干広げた。

    【活動】
    (1)活動の中心となった日本リスク研究学会年次大会(2013~2015 年度)における企画セッションについて表 1 にまとめた。6 件の企画セッションを開催し、計 24 件の発表を頂いた。

    表 1.RSTG が企画した年次大会における企画セッション

    記号年度企画セッション名発表件数
    A2013知ってるようで知らない!?~基準値の根拠を探る~4件
    B2014知ってるようで知らない!?~基準値の根拠を探る2~4件
    C2014規制ガバナンスの核心―根拠に基づく意思決定プロセスの事例と潮流―5件
    D2015リスク管理の歴史学3件
    E2015身近で見過ごされてきたリスク4件
    F2015化学物質管理のレギュラトリーサイエンス-実践的研究4件

    企画セッションの開催によってレギュラトリーサイエンスの事例を多数収集することができた。この事例を用いて、レギュラトリーサイエンスの分野毎の相違点や共通項を探る試みを行った。このために、共通の評価軸を用いてマトリックス解析を行った。複数の事例を横断的に評価するための評価軸として 10 項目を設定した。本マトリックス解析手法は、事例研究の共通項を探したり、相違点を抽出したりする際などに有効と考えられる。さらに、今後レギュラトリーサイエンスの事例を紹介する際に上記の評価軸をベースに紹介すると、他の事例と比較しやすくわかりやすくなるだろう。

    (2)RSTG ミーティングを 2015 年 8 月 15~16 日に山形県で行った。上記の企画セッションの取りまとめ方法についての議論や今後のレギュラトリーサイエンスのあり方に関する提言について議論を行った。これらの議論は、日本リスク研究学会誌のレギュラトリーサイエンス特集号に論文として投稿することが決定した。

    (3)2015  年度の日本リスク研究学会年次大会(名古屋大学)においてワークショップ「分野横断的にレギュラトリーサイエンスを考えよう」を開催した。「レギュラトリーサイエンス」という用語の生い立ちなどについて、防災分野や原子力分野などからの話題提供、RSTG  からの活動報告、全体でのディスカッションという流れで進行した。活発な議論が行われ、その一部は日本リスク研究学会誌のレギュラトリーサイエンス特集号論文の内容に反映された。

    【成果物】
    企画セッションにおいて収集した事例をどのようにまとめ、どのように活用するかが重要な点である。まず、日本リスク研究学会誌のレギュラトリーサイエンス特集号に活動報告論文が 1 報掲載され、もう 1 報を同誌に投稿予定である。基準値の根拠を探るシリーズについては、一般向けの本を出版することができた。また、メンバーが学会やセミナー、講演会などを通じて、レギュラトリーサイエンス概念を普及させる活動も継続している。今後の展望として、教育目的で活用できそうなレギュラトリーサイエンス事例集の出版も有用性が高いと考えられる。

    成果物リスト:

    1. 河野真貴子、藤井健吉、平井祐介、井上知也、村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生. レギュラトリーサイエンスの実践が示唆するリスク研究の方向性(仮題). 日本リスク研究学会誌, 投稿準備中
    2. 永井孝志、藤井健吉、平井祐介、村上道夫、小野恭子、保高徹生、河野真貴子、井上知也、岸本充生 (2016) 化学物質のリスクを中心としたレギュラトリーサイエンスの事例解析―日本リスク研究学会レギュラトリーサイエンスタスクグループ活動報告―. 日本リスク研究学会誌 26(1), 13-21
    3. 村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生 (2014) 基準値のからくり, 講談社.

    講演・発表活動の事例:

    1. 岸本充生、関谷翔、上野雄史:環境リスク教育セミナー「科学コミュニケーションにおけるレギュラトリーサイエンスの必要性」(2015)
    2. 小野恭子:「知れば社会が見えてくる?!消費期限と賞味期限のからくり」トライボロジー研究会第 27 回講演会特別講演 (2016)
    3. 永井孝志:「基準値の根拠から考える食の安全」 日本環境変異原学会第 44 回大会市民公開講座「食の安全ーリスクをどう考えたら良いのかー」
    4. 平井祐介:「レギュラトリーサイエンス」 日化協ケミカルリスクフォーラム平成 28 年度第 1 回研修会(2016)
    5. 藤井健吉:「実効性のある評価ガイダンスの構築」アセアン化粧品工業会総会  (2014)
    6. 村上道夫:「安全基準の科学 ―レギュラトリー・サイエンスとしてのリスク学―」第 86 回日本衛生学会学術総会 (2016)
    7. 村上道夫:「基準値の根拠から考える水の安全」 日本環境変異原学会第 44 回大会市民公開講座「食の安全ーリスクをどう考えたら良いのかー」
    8. 村上道夫:「基準値と安全目標の科学」安全工学シンポジウム  (2016)