木. 10月 30th, 2025

    日本リスク学会長 岸本 充生

    2025年度日本リスク学会 学会賞、奨励賞、グッドプラクティス賞を以下のように決定しましたのでお知らせします。 学会員からの推薦に基づき、表彰委員会での厳正な審査により選考されました。大阪大学吹田キャンパスで開催される第38回日本リスク学会年次大会の1日目(2025年11月8日)に表彰式を執り行います。受賞者による受賞講演も行われます。

    【日本リスク学会 学会賞】
    米田 稔 (京都大学 環境安全保健機構長・副学長)
    選考理由:米田稔氏は本学会の理事を長らく務め、編集委員長などを担当してこられた。また、第18期学会長(2022.7.1~2024.6.30)を務め、現在も監事として学会に貢献いただいている。京都大学桂キャンパスにて開催された2022年度の第35回年次大会の実行委員長を務め、感染症対策で2年続いたオンライン開催のあとを受けて、対面とオンラインでの大会開催を決定・実行した。加えて、2019年に出版した「リスク学事典」において、編集委員を務められ、リスク評価手法に関するテーマを体系的に取りまとめられた。リスク学の研究においては、工学的なアプローチだけではなく、ガバナンスやコミュニケーションといった幅広い観点から、まさにリスク学の研究を展開してこられた。福島第一原子力発電所の事故のあとは、放射線リスクの研究やリスクコミュニケーションの実践にも取り組み、理論的な研究と実践的な研究の両方に熱心に取り組まれた。
     以上より、学会活動及び研究実績において特に顕著な業績があると認められるため、学会賞に相応しいと考える。

    【日本リスク学会 奨励賞】(推薦書到着順)
    相馬 ゆめ(北海道大学大学院文学院人間科学専攻 博士後期課程/日本学術振興会特別研究員)
    選考理由:相馬ゆめ氏は博士後期課程の大学院生でありながら、学会誌「リスク学研究」において、筆頭著者としての原著論文をはじめ、共著も含め数多くの発表を行ってきている。また、リスク学分野に限らず、心理学分野においても筆頭著者論文を執筆しており、優れた研究業績を挙げている。日本リスク学会の年次大会にも積極的に参加・発表をしており、2023年度には口頭発表部門での大会優秀発表賞を受賞していることに加え、他者への発表に対しても多くの質問や建設的な議論を展開しており、その積極的な姿勢も高く評価できる。
     以上より、今後一層の発展が期待される優秀な研究業績を挙げていると認められるため、奨励賞に相応しいと考える。
    ※表彰委員の大沼氏は相馬氏の指導教員であるため、審議には参加しなかった。

    中山 敬太 (早稲田大学社会科学総合学術院 講師(常勤))
    選考理由:中山敬太氏は、環境法政策学の分野を中心に、近年はマイクロプラスチックやPFAS汚染などの環境リスクに関する法政策の理論的研究論文を発表し、不確実性を伴うリスクへの政策形成や規制設計に学術的視座を示している。また、日本リスク学会の年次大会に継続的に参加し、発表及びリスク政策をめぐる幅広い議論に積極的に加わってきた。加えて、次期リスク学事典検討タスクグループのメンバーとして、リスクと法政策の交錯する論点について議論を展開し、本学会の知的基盤形成に貢献している。今後は「リスク学研究」への学術論文等の掲載にも期待したい。 以上より、今後一層の発展が期待される優秀な研究業績を挙げていると認められるため、奨励賞に相応しいと考える。

    【日本リスク学会 グッドプラクティス賞】
    公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会ICT局
    代表:大嵩 豪朗 (同上)
    活動名:「2025大阪・関西万博におけるデータ利活用の取組とVPIAの実施」
    選考理由:データ利活用5原則とデータ利活用ガイドラインを定めたうえで、個別のデータ利活用プロジェクトに対して、事前にVPIA (Value and Privacy Impact Assessment) を実施するとともに、VPIAコミュニティに第三者評価を行ってもらうという、パーソナルデータ利活用のリスクベネフィットに関するコミュニケーションの仕組みを確立した。またVPIAの結果を、利用者がアプリをダウンロードする際の同意画面に提示することで、同意することのリスクベネフィットを検討する材料や第三者による評価を確認することができる仕組みを実装できた。
     以上は、リスク学の社会実装や普及にかかる顕著な実践的活動であると認められるため、グッドプラクティス賞に相応しいと考える。 参考URL: https://comm-data-utilisation.expo2025.or.jp/ (2025年11月30日に終了予定)

    以上

    By sraj